第1回受賞者

内閣総理大臣賞

金銀箔粉の伝統的な製造・表面処理加工技術を活かした導電塗料用銅粉の開発
同社は90年に、アメリカのエレクトロニクス業界でニーズが高まりつつあった、電磁波シールド塗料用金属粉の開発に着手。導電性とコストに優れながらも、さびやすいという欠点を持っていた銅粉の商品化に取り組んだ。 まず、導電性に優れた樹枝状銅粉を形成。さらに表面の水酸基を取り除き、塗料の基剤となるアクリル樹脂とのなじみを良くするカップリング剤で表面処理。経時変化による性能劣化のない銅粉を完成させ、世界中でパソコンや携帯電話の電磁波シールド用塗料として使用された。 電磁波規制の強化に伴いシールド用塗料の役割こそ銀に譲ったが、その用途はプリント基板の配線や絶縁放熱用の表面処理など、今も広がり続けている。

福田金属箔粉工業(株)梶田治さん

受賞者の声

この賞をいただいてから、「伝統技術のハイテクへの応用」というテーマで講演をする機会が増えました。そこで改めて、業種を問わず、このテーマで悩んでおられる企業が少なくないことを知りました。ものづくりにおいて伝統技術という核心の部分は、捨てるべきものでも変えるべきものでもありません。しかし、その用途は時代に合わせて変えていく必要があります。

もし、私たちが金屏風や金張りの仏壇など、用途まで伝統にこだわっていたら、どうなっていたか? 自動車やエレクトロニクスといった、時代が求める領域に進出したからこそ、今日があるのです。
ただ、そのためには新しい用途を提案してくれる、あるいは意外な発想を閃かせてくれる「人」と知り合うことも必要です。それは社内や既知の業界の人物ではなく、これまでまったく縁のなかった世界の人です。私はよく社員にこう言います。「開発に携わる者は、貯金ならぬ“貯人”をしなさい」と。受賞によって、これまで知り合うことのなかった異業種の方々との交流が生まれ、多くの“貯人”ができたのはありがたいことです。皆さんも、社内や業界内の評価のみにとらわれず、「自分たちの技術の真価を広く世に問う」くらいの気持ちで、応募なさってください。

受賞者(代表) 梶田 治(代表)、吉武 正義、井上 精二、山本 次郎
所属企業等
●福田金属箔粉工業(株)
https://www.fukuda-kyoto.co.jp/
1700年(元禄13年)創業。以後、300年にわたり、金属箔粉の製造一筋に携わる。明治以降は工業材料分野に進出。1936年には国産初の電解銅粉を製造。表面処理技術と共に導電塗料用銅粉のコア技術となった。伝統に根ざした多彩な製法と製品は、カップ麺のフタから新幹線のディスクブレーキパッドまで、あらゆる場所に息づく。
【京都市山科区】

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